【Vol.7】動けない原因は「他人の目」ではない?~「はずかしさ」から見つけた自意識のスイッチ~

こんにちは。大人のADHD・HSP専門コーチの原 登志文(はら としふみ)です。
自分の考えを外に向けて発信しようとしたり、誰かの前で何かを表現しようとしたりする瞬間。
「襲ってくる」という予兆すらなく、一瞬にして、圧倒的な「恥ずかしさ」の空気の中に居る。そんな経験はありませんか?
そうなった瞬間、頭は真っ白になり、心と体はきゅっと強張って、完全にフリーズしてしまう。誰かに見られているような、あの独特の気配に一瞬で包まれて、言葉が内側に引っ込んでしまうのです。
実は今、この記事を書いている私も、まさにその「恥ずかしさ」の空気の中に居て、フリーズしている渦中にいます。
ロッキングチェアの記憶

思い返せば、私の中に昔からずっと居座り続けている、ある「恥ずかしさ」の記憶があります。
それは小学生の頃、夏休みに祖父の家に行ったときのことです。
なぜそうなっていたのか、きっかけは覚えていません。ただ、気がつくと私はいつも、縁側に置いてあったロッキングチェアの上で、顔を隠すようにして丸まっているのでした。
時間にすれば、最初の1時間くらいだったでしょうか。
とにかく恥ずかしくて、顔を上げられない。そんな「儀式」のような時間が、毎年夏が来るたびに繰り返されていました。
子供の頃の私には、「誰かに見られている」という明確な意識があったわけではありません。ただ、理由もなく、圧倒的な「恥ずかしさ」だけがそこにあり、体がフリーズしてしまっていたのです。
小学校の高学年になる頃にはその行動自体は無くなっていましたが、その「恥ずかしさ」という感覚だけは、大人になるまでいつも私に付きまとっていました。
そして大人になった今でも、何かを表現しようとする瞬間に、あのロッキングチェアで丸まっていたときと全く同じ「フリーズ」が、体の中で発動することがあるのです。
視線のスイッチ

大人になった私に、その「フリーズの正体」を教えてくれる決定的な出来事がありました。
あるコーチングの講座に参加していたときのことです。
会場でワークに取り組んでいる最中、私の視界の中に、会場の端にいる人が入りました。その人の視線が、こちらに向いていると感じた、まさにその瞬間でした。
「はずかしい」と感じる時間すらありませんでした。予兆も、感情のステップも一切挟まず、その視線を感じた瞬間に、私の体はすでに完璧にフリーズしていたのです。
あの夏のロッキングチェアで丸まっていたときと、全く同じ状態に一瞬でロックされていました。
しかし、ワークが終わり、冷静になって振り返ったとき、あることに気がつきました。
ワークの内容や全体の状況を考えると、その人は実際には私を見ていたわけではなかったのです。つまり、私を捉えたはずの視線は、私の「錯覚」でした。
このとき、私の中で、一つのパラダイムシフトが起きました。
私はずっと、「現実に他人が自分を見ているから、恥ずかしくてフリーズするのだ」と思っていました。
でも、実際は違ったのです。
「はずかしい」という感情が湧くよりも早く、相手が実際に見ているかどうかに関わらず、私の内側にあるアンテナの感度が『見られているかもしれない』という意識のスイッチをパチンと入れた瞬間、体はすでにフリーズを作り出していた。
私を縛り、動けなくさせていたスタートボタンは、外側の誰かの目線ではなく、自分自身の内側にある「意識のスイッチ」だったのだ、と気づいた瞬間でした。
スイッチを入れたままで、進む

私たちが何かを表現しようとするとき、頭が真っ白になったり、動けなくなったりするのは、決して「フォロワーの数」や「誰が見ているか」という外側の環境のせいだけではありません。
自分の中にある過敏なアンテナが、大切な自分を守るために(たとえそれが今の自分にとっては不自由に感じられたとしても)、最速でフリーズのスイッチを押し、システムを作動させている。おじいちゃんの家のロッキングチェアの頃から、ずっと変わらずに自分を保護しようと働き続けている防衛反応なのです。
だからといって、その「恥ずかしさの空気」が、客観的に気づいたからといってすぐに消えてくれたり、穏やかに緩んでくれたりするわけではありません。その空気は、相変わらずそこに生々しく存在し続けます。
大切なのは、その「恥ずかしさ」を消そうと格闘することではありません。
「あ、いま自分の中のスイッチが作動して、あの空気が満ちているな」
そうやって起きている現象をただ客観的に認め、その空気を感じたままの状態で、それでも何かをすることや、やってみること。
その重たい空気の中で、静かに次の一歩を選び直し、行動を起こしていくために、コーチングというアプローチがあります。
フリーズを消すのではなく、フリーズしている自分を置いたままで、私たちはここからまた、進み始めることができるのです。
もし今、あなたも「頭が真っ白になるような空気」の中で、身動きが取れなくなっているとしたら。
フリーズしてしまうほどの繊細なアンテナを持ったあなただからこそ、選べる未来が必ずあります。
あなたがその空気の中に居ながらにして、静かに次の一歩を選び直せるように、私はプロのコーチとして、その隣に並走し続けます。


