【Vol.10】過集中で体を壊した私が、「遅々として進まない1歩」で成果を出せるようになるまで
「ついつい限界まで自分を追い込んでしまう」
「やり始めると止められず、倒れるまでやり切ってしまう」
大人のADHDやHSPの傾向を持つ方から、こうしたお悩みをよく伺います。実は、かつての私もまさにその典型でした。
今回は、私が会社員時代に「過集中」と「プレッシャー」で体を壊してしまった体験と、そこから抜け出して複数の仕事を無理なく回せるようになった現在の工夫についてお話しします。
テレビを捨て、酒に逃げ、倒れた会社員時代

会社員時代、私は社内研修のインストラクターをしていました。
月の半分は研修の準備、残り半分は10か所の営業所を回って研修を繰り返す日々。たった2週間で受講者を「教えられるレベル」に引き上げなければならず、常に猛烈なプレッシャーと背中合わせでした。
当時の私は、まさに「極端」そのものでした。
研修インストラクターになった際、すべての時間を勉強に充てるために、自宅のテレビを捨て、趣味だった映画鑑賞もゴルフもすべてやめました。
仕事帰りは、晩御飯立ち飲みで30分ですませ。その際に自分の限界まで飲みます(お酒が弱いのでビール大瓶1本と日本酒1合)。緊張で興奮しきった脳を無理やり麻痺させて眠りにつき、夜中2時でも3時でも目が覚めたら、そこから朝まで研修の勉強をする——。
当時は「期限があるのだから、こうせざるを得ない」と信じ切っていました。
結果として仕事は高く評価されましたが、代償はあまりにも大きかったのです。
7年後、肝機能異常でドクターストップ。さらには左半身の感覚が薄くなり、脳外科や神経内科を受診する事態にまで追い込まれました。
仕事をやり切った感覚はありましたが、完全に体を壊してしまったのです。
今振り返る「過集中」と「HSPの圧迫感」

今でこそ分かりますが、当時の私の状態には、明確な特性があらわれていました。
■ADHD特有の「過集中(ハイパーフォーカス)」
一度スイッチが入るとブレーキが効かず、テレビや趣味をすべて絶ってまで没頭してしまう。ゼロか100かの極端な行動になり、体の限界に気づけない。
■HSP特有の「圧迫感・責任感の強さ」と身体症状
「期待に応えなければ」とプレッシャーを重く受け止め、脳のキャパシティを超えてしまう。過度なストレスが「左半身の麻痺感」や「肝機能異常」といった身体のSOSとしてあふれ出てしまった。
仕事帰りの深酒も、過集中で交感神経が立ちっぱなしになった脳を、強制的にオフにするための無意識の「自己防衛(リセット)」だったのだと痛感します。
「体を壊さない」ために取り入れた、たったひとつの工夫

現在は、薬剤師、学校薬剤師、コーチ、そしてコミュニケーション講座の講師として活動しています。
学ぶことやトレーニングしたいことは山ほどあり、毎日時間が足りないほどですが、当時の反省から「絶対に体を壊すまで自分を追い詰めない」ことを何より大切にしています。
そのために取り入れているのが、『Slight Edge(スライト・エッジ)』という本からヒントを得た思考法です。
「一気に過集中して終わらせる」のではなく、「ほんの少しの積み重ねを、時間の力を借りて大きな成果にする」という考え方です。
過集中になりがちな私が、このノウハウを実践するうえで工夫しているポイントが2つあります。
- 「遅々として進まない」感覚を受け入れる
一気にやろうとせず、小さな歩みを重ねます。最初は「全然進んでいない」ともどかしく感じますが、その「もどかしさ」こそが過集中を防いでいる証拠でもあります。 - ハードルを「週1回」まで下げる
この手のノウハウは「毎日続けること」が推奨されがちですが、ADHD/HSPの特性があると「毎日できない自分」に落ち込んでしまいがちです。そこで私は「一週間に一回でもOK」と、時間軸を広くとるようにしました。
「遅々とした歩み」が、1年後には大きな景色になる
この工夫を始めてから、「遅々として進まない」感覚を持ちつつも、確実に変化が現れました。
ふと振り返ってみると、昨年と比べて明らかに前進しており、昨年とはまったく違う現状があることを確認できたのです。
体を壊すことなく、複数の役割やプロジェクトを同時進行できている自分がいました。
限界まで自分を追い込んでしまう方は、決して「要領が悪い」のでも「根性が足りない」のでもありません。持つエネルギー(過集中)が人一倍強いからこそ、ブレーキの踏み方を工夫する必要があるだけなのです。
「毎日完璧にやる」必要はありません。
「週に1回でも、亀の歩みでもいい」と時間軸を緩めてみませんか?
その小さな1歩の積み重ねが、1年後のあなたを全く違う素晴らしい場所へ連れて行ってくれますよ。


